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#033 Data Studio復活と、BIが分解されていく話

作成者: 月曜日のトラ|2026/8/20

お世話になっております。月曜日のトラの岩永です。

AIまわり・データ分析まわりで、最近よく見かけるのが「分析レポートはMarkdown(.md)で書くべきか、HTMLで書くべきか」。

AnthropicのClaude Codeチームからは、「HTMLの効きが、思っていた以上にいい」という記事が出ていましたね。100行を超えるMarkdownは人が読み切らないけれど、HTMLなら色や図やインタラクションを入れられて、URLで共有もできる。
レポートの「置き場」としては、こちらに分があるという話でしたが、皆さんはどうしていますか。

扱う側の前提によって、最適なフォーマットが分かれはじめているというこのお話、今号のフリーコラム「Looker Studioが、データポータルに戻った話」と思いがけずつながっています。

それでは今号もお付き合いください。

フリーコラム

Looker Studioが、Data Studio(日本名:データポータル)という名前に戻りました。以前は、Google Data Studioという名前でした。日本では「データポータル」と呼ばれていた時期もあります。その後、2022年10月にLooker Studioになり、そして2026年4月に再びData Studioへ戻りました。

※以降、このメールの読者のマジョリティに合わせ、「データポータル」と表記します。

Googleのリリースノートでは、データポータルのホーム画面を更新し、データポータルのレポート、データソース、BigQueryの会話型エージェントなどに、ひとつの場所からアクセスできるようにしたと説明されています。

なぜ名前を戻したのか。ここから先は私の推測です。

おそらくGoogleは、Looker Studioという名前でBIソリューションをLookerというブランドに統一したものの、Looker本体との役割の違いが少しわかりにくくなったのではないかと思っています。

Lookerは、セマンティックモデルやガバナンスを含めたエンタープライズBI。
一方でデータポータルは、もっと軽く、速く、個人やチームがデータを見たり、共有したり、AI時代のデータ活用の入口として使うもの。

現に、データポータルはさまざまな企業が、無償だけど高機能なBIツールとして活用しています。

そう考えると、今回の名称変更は「昔の名前に戻した」というより、BIツールの役割が変わってきたことを示す出来事のように見えます。

さて、この数ヶ月で、BIを取り巻く環境はかなり変わりました。

たとえばTableauは、Tableau Desktop Free Editionを提供しはじめました。

これまでTableauを無料で使う場合、公開前提のTableau Publicか、期間限定のトライアルという選択肢が中心でした。しかしFree Editionでは、ローカル環境で非公開データを扱いながら可視化できます。

もちろん、組織で広く活用したり、クラウドに公開したり、ガバナンスを効かせたりするには有償版が必要です。ですが、「まず自分でデータを見て、考える」ためのハードルはかなり下がりました。

一方で、もっと大きな変化もあります。それは、そもそもBIツールを使う必要があるのか、という問いです。

これまでは、データウェアハウス上のデータを簡易に見るためにはBIツールが必要でした。ダッシュボードを作り、グラフを置き、フィルタを作り、関係者が同じ画面を見る。これは今でも重要です。

ただ、AIツールが進化したことで、別の選択肢も現実的になってきました。

たとえばClaude Codeのようなツールを使えば、HTMLベースで簡易的な分析画面やレポート画面を作ることもできます。BigQueryやAPIに接続し、必要なデータを取得し、見たい人に合わせた画面を作ることも、以前よりかなり簡単になりました。

つまり、昔ならBIツールで作るしかなかったものが、いまは「個別に作る」ことも選択肢に入ってきています。

ここで重要なのは、BIが不要になるという話ではありません。
BIという名前で呼ばれていたものが、いくつかの役割に分解されはじめているのだと思います。

たとえば、こんな分解です。

  • データをきれいに整える

  • 指標の定義をそろえる

  • 誰がどのデータを見てよいかを管理する

  • 定点観測できるダッシュボードを作る

  • 必要な人に、必要な形でデータを届ける

  • AIが正しくデータを読めるようにする

これらを全部ひっくるめて、これまでは「BI」と呼んでいたのかもしれません。

でも、AI時代には、この中でも特に重要なものが変わります。

それは、画面そのものではなく、データの意味を定義することです。

  • 売上とは何か。

  • 商談とは何か。

  • 有効リードとは何か。

  • CVとは何か。

  • どの期間で見るのか。

  • どのチャネルで分けるのか。

  • 誰にとって重要な指標なのか。

ここが曖昧なままだと、BIツールを使っても、AIに聞いても、出てくる答えは曖昧になります。

逆に言えば、ここが整理されていれば、BIツールで見ることもできるし、AIに聞くこともできるし、個別のHTML画面にすることもできるし、Slackやメールに自動で流すこともできます。

この流れで見ると、ヘッドレスBIやセマンティックレイヤーの重要性が増している理由もわかります。

セマンティックレイヤーとは、簡単に言えば「データの意味をそろえる層」です。

データベース上には、売上金額、顧客ID、商談ステータス、広告費、CV数など、さまざまなデータがあります。ただ、それらのデータをそのまま見ても、業務上の意味はすぐにはわかりません。

たとえば「売上」と言っても、受注金額なのか、請求金額なのか、入金済み金額なのかで意味が変わります。「商談化率」も、分母をリード数にするのか、有効リード数にするのかで数字が変わります。

こうした指標の定義や、データ同士の関係性をあらかじめ整理しておく場所が、セマンティックレイヤーです。

ヘッドレスBIとは、ざっくり言えば「BIの中身だけを切り出す」考え方です。

画面はTableauでも、Lookerでも、データポータルでも、Excelでも、独自のWeb画面でも、AIチャットでもよい。でも、その裏側にある指標定義やデータモデル、つまりセマンティックレイヤーは共通化する。

これらを用意しておくことで、見る場所が変わっても、数字の意味はぶれにくくなります。

たとえば営業部がSlackで「今月の商談化率は?」と聞いたときと、マーケティング部がダッシュボードで商談化率を見たときに、違う定義の数字が出てきたら困ります。

AIが便利になればなるほど、この問題はむしろ大きくなります。

だから今後は、「どのBIツールを使うか」だけでは足りません。

それ以上に、

  • 何を見るべきか

  • なぜその指標を見るのか

  • その指標はどう定義されているのか

  • 誰が、どの粒度で、どの頻度で見るべきか

  • AIやAPIから使える形になっているか

を整理することが重要になります。

BIツールは、これからも必要です。

ただし、BIツールだけで完結する時代ではなくなっていくと思います。

顧客が本当に必要だったものは、きれいなダッシュボードそのものではありません。

必要なタイミングで、必要な人が、必要な判断をするためのデータです。

その届け方が、ダッシュボードなのか、AIチャットなのか、Slack通知なのか、HTMLレポートなのか、業務システムの中に埋め込まれた小さな表示なのか。

そこは、もっと自由になっていくはずです。

なので、これから考えるべきなのは「どのBIを使うか」だけではなさそうです。

  • そもそも何を見るべきなのか。

  • その数字は、誰のどんな判断に使われるのか。

  • その数字の定義は、人間にもAIにもわかる形で整理されているのか。 

ここが曖昧なままBIを作ると、きれいなダッシュボードはできます。
でも、意思決定にはあまり使われない。
意思決定に使われたら使われたで、誤った集計結果によりミスリードするリスクすらあります。

これは昔からあった問題ですが、AI時代にはより際立つようになるはずです。
誰もがデータにアクセスしやすくなるぶん、目的とデータ定義が曖昧だと、余計な仕事を増やしてしまう。
だからBIの主戦場は、画面づくりから、数字の意味づくりに移っていくのだと思います。

Looker Studioがデータポータルに戻ったことも、ただの名前変更として見るより、「BIツールって、そもそも何をするものなんだっけ?」という問いが表に出てきた出来事として見ると、なかなかおもしろいなと思っています。

執筆/西 正広

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「フォームは必要」「経験がない案件は難しい」みたいな当たり前を、一度崩して考える姿勢って大事ですね。

降伏って、自分を否定することではなく、視野を広げるために一度思い込みを手放すことなのかもしれないです。

4月から新しい環境に移った方や、「今までのやり方が通用しない」と感じている方におすすめしたい一冊です。

執筆/小松 愛

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今号は、Looker Studioがデータポータルに戻ったというニュースを入口に、BIツールが「画面を作る道具」から「数字の意味を組み立てる場所」へと、役割が分解されていく流れをお届けしました。

書籍紹介は、「降伏論」。「広告をどう打つか」から「そもそも広告をやるべきか」へ視点を移すという話で、今号のテーマと、どこか響き合う一冊でしたね。

「数字の意味を整える」ことも「前提を問い直す」ことも、地味で、時間のかかる作業です。ただ、AIが日常になればなるほど、ここをきちんと組んでおくと、あとから手に入る選択肢が、ずいぶん変わってきます。

次号 #034 は、4月セミナーのまとめをお届け予定です。

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