#020 サチコのインプレッション激減問題。データ分析者の考えとは(複製)
お世話になっております。月曜日のトラの岩永です。
秋も深まり、朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。データ分析をしていると、画面ばかり眺めて季節の変化に気づかないことありますよね。
先月、サーチコンソールのインプレッション数が大きく減少して、SNS上でも話題になりました。「数値がバグった?」と不安になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回のメルマガでは、そんなサーチコンソールのお話をさせていただきます。
📌 目次
- サーチコンソールは全デジタルマーケター必見のツール
- おすすめコンテンツ「A/Bテスト実践ガイド 真のデータドリブンへ至る信用できる実験とは」
- 10月23日開催セミナーのお知らせ
サーチコンソールは全デジタルマーケター必見のツール
多少数値がバグってもこう使う
GA4に比べると軽視されがちなGoogleサーチコンソール(以下、サチコ)。
「サチコってSEO担当者が見るツールでしょ?」と思っているデータ分析者もお見かけします。
でも、データ分析屋からいうと、サイト運営をするならサチコはGA4と並んでマストで導入すべき基本ツールです。
サチコが教えてくれる「ユーザーの本当の目的」
流入キーワード = ユーザーの来訪目的
自然検索流入が多いサイトの場合、サチコで確認できる検索キーワード=ユーザーがサイトに来ている目的です。
例えば、「こういう感じのユーザーを呼びたいな」と思ってコンテンツを作っているとしますよね。でも、実際にサチコを見てみると、全然違うキーワードで来ていたりする。そのギャップこそが宝物です。
「あ、こういう人が来ているのであれば、このコンテンツが必要なんじゃないか」という新しい戦略が見えてきます。
分析から施策へ
サチコを見る本来の目的は、「どんなユーザーが、どんなキーワードで、どんな目的でサイトに来ているのか」を知ることです。
それがわかれば、何を目的にサイトに訪れたのかの推測を立てることができ、「じゃあこういうコンテンツを作ろう」「こういう導線を設計しよう」という具体的なアクションにつながります。
サイト改善の方向性を決める判断材料として、サチコは非常に有効なツールです。
例えバグってもサチコは大切なデータの宝庫
サチコのインプレッション数が減少した問題
2025年9月、サチコのインプレッション数が大きく減少しました。Xを始めとするSNSでもかなり話題になりましたよね。
「サチコ!しっかりしてくれ!」と、声に出せない叫び声をあげた人も多かったのではないでしょうか。
インプレッション数こそ減少したものの…
- クリック数:ほぼ変化なし
- 平均検索順位:向上したものも
- CTR(クリック率):改善傾向
インプレッション減少の正確な原因は公式発表されていませんが、SEO業界では「Googleの検索結果表示仕様変更により、ボット由来の閲覧数が減少したのでは」という見方が有力です。
具体的には、Google検索URLの&num=100パラメータ(1ページに最大100件表示)の廃止が影響している可能性が指摘されています。
廃止前はGoogle検索URLに&num=100を付けることで、1ページに最大100件の結果を表示可能だったため、スクレイピング(自動データ収集)が効率化できていたのです。
ところが、廃止により効率的なスクレイピングができなくなり、ボット由来のゴーストインプレッションが減少。トップ10以内のクエリは人間ユーザーの閲覧が多いので影響が小さいものでしたが、ロングテールクエリはスクレイピングによる「ゴーストインプレッション」が消えるという事態に…。
サチコのデータがより人間中心になったともいえますが、インプレッション数は大きく減少することになりました。
データに乖離が見られるとき分析担当者はどう対応すべきか
今回のケースで、まずやるべきはGA4との照合です。サチコのインプレッションは減っていても、GA4で見る実際のオーガニック流入が変わっていなければ、特に問題ないでしょう。
実務的には、こんな対応が考えられますね。
- クリック数をメインKPIとして設定:実際のユーザーアクションを示すデータとして活用
- インプレッションは参考値として扱う:現状は不安定なため、主要指標としては使わない
- 順位データは引き続き信頼できる指標として活用:今まで通り確認していけばOKです
- 変動があった9月10日前後の比較は慎重に:データの取り方が変わった可能性があるため、過去データとの単純な比較はできないと覚えておきましょう
そもそも何のためにサチコのデータを見るのか
データ分析をしていると、数字の増減にばかり目がいきがち。いつもの傾向と大差ないデータをみるうちはいいですが、今回のようなトラブルがあると困ってしまいますよね。
そんなときは、そもそもの話に立ち返りましょう。
「そもそも、なぜサチコを見ているのか?」 「この数字から、何を知りたいのか?」
「なんでこの数値を見てるんだっけ?」という視点を忘れないことが、慌てないための基本です。
まとめ
サーチコンソールは、SEO担当者だけのツールではありません。マーケター、ディレクター、編集者など、サイト運営に関わる全員が活用すべき「ユーザー理解のツール」です。
自然検索流入があるサイトなら、サチコで確認できる検索キーワードは、ユーザーがサイトに来ている目的そのもの。「こういうユーザーを呼びたい」という理想と実際のギャップを知ることで、本当に必要なコンテンツや導線が見えてきます。
現在、インプレッションデータに関する問題が発生していますが、これは「何のためにこの数値を見ているのか」を再確認する良い機会でもあります。クリック数と順位データを中心に分析を進めれば、今まで通りユーザー理解とサイト改善は可能です。
GA4と並んでサチコを導入し、データの背景にあるユーザーの目的を読み解きながら、より良いサイトを作っていきましょう。
執筆/岩永 梢絵
監修/西 正広
おすすめ書籍 & コンテンツ
A/Bテスト実践ガイド 真のデータドリブンへ至る信用できる実験とは
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執筆/岩永 梢絵
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講師(登壇者):葉井 貴秋 (株式会社月曜日のトラ)
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
データは時に揺らぎますが、その背景にある「ユーザーの目的」は変わりません。データの揺らぎに振り回されず、ユーザーの本当の目的を追い続ける——これが分析者としての基本です。サチコとGA4を組み合わせて、より良いサイト運営に活かしていきましょう。
ちなみに、このメルマガは普段、複数の執筆者による多角的な視点でお届けしています。今回は岩永が一人で執筆させていただきましたが、次号からはまた様々な専門家の知見をお届けいたします。お楽しみに。
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