この広告からどれだけ商談化したのかを知りたい!GA4とMAとSFAの繋げ方
この記事は、B2Bマーケアドベントカレンダー2025 11日目の記事です。
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私が代表をつとめる株式会社月曜日のトラでは、デジタルマーケティングのデータ分析・活用支援を行っております。
昨今、BtoB企業においてはMAやSFAの活用進んでいることもありまして、MAやSFAのデータをBIで可視化したいといったご要望をいただくことも増えてきました。
そうしたご支援をする中で感じたこと。
- 広告・SEO・メールといった「Web集客側」
- SFAを中心に見る「営業企画・経営企画」
これらの間で “視点のギャップ” が起きているということでした。
普段SFAを中心にマーケティング分析を行っている方は
- チャネル(資料請求/お問い合わせ/セミナーなど大枠)
- ステージ推移
- パイプラインと商談進捗
言い換えると、「人・案件ベース」の世界線でデータを見ています。
一方、Web集客をメインで行っているマーケターは
- どの広告がCVにつながったか
- どの記事・LPが商談化に寄与したか
- どの参照元のリードが成約につながったか
言い換えると、「セッション(Webサイト訪問)ベース」の世界線でデータを見ています。
しかしながら、SFAで観測できるWebチャネルは「サービス資料請求ダウンロードフォーム」などといった形で記録されます。
そのフォームにどのような広告やオウンドメディアの記事経由でMQL・SQL獲得できたのかといった、Web集客系マーケターが知りたいであろう分析をするには情報が足りません。
これが、集客施策におけるマーケティングROIの評価を難しくしている最大の原因と考えています。
前置きが長くなりましたが、この記事では、主にWeb集客を担当するマーケターに向けて記事を書いてまいります。
なぜWeb集客マーケターはGoogle アナリティクス(GA)とMA/SFAを連携して分析すべきなのか?
前述の通り、SFAで記録されていく、「サービス資料請求ダウンロードフォーム」といったWebキャンペーンの情報に対して、
- どの広告/SEO記事/メール
- どのランディングページ
- 何回目の訪問で
といった情報をエンリッチ化することができます。
これができるとなにがよいのか。
今までわかりにくかった、デジタル広告経由×このフォーム何件のMQL・商談が獲得できたのかといったことがわかるようになります。これができれば、Web集客施策の最適化も、WebCVベースではなく、MQL・SQL・受注転換といった指標で分析できるようになり、広告の費用対効果が明確にわかるようになります。
BtoBマーケターならば、以下のようなお悩みは誰しもが経験があることでしょう。
- 広告やオウンドメディアから資料はダウンロードされるんだけど、その先に繋がらない
- Meta広告でセミナーには申し込んでくれるものの、競合企業やパートナーばかり
いずれもGAや広告管理画面で見るといずれも1コンバージョン。
一方で、MAやSFAの世界で見ていたらCVの来訪経路はわからない。
だからこの両者をくっつけて、どの広告から、どのフォームで、どれだけMQL・SQL・受注転換しようというのがコンセプトです。
なお、一部のMAツールではデフォルトでGAのutmパラメータの情報を記録してくれるものもあります。(Salesforce Account Engagement, HubSpotなど)
ただ、この情報で記録されるのはあくまで「最初にフォーム送信した時の経路」。
BtoBマーケティングにおけるナーチャリングは複数回のデジタル接点をもって、少しずつ醸成されていくものです。
サイト訪問をするたびに利用する集客チャネルも変わります。
GAで計測できるようなセッション単位の情報がわからないと、正確な集客ROIなど出せないのです。最初のutmパラメータの情報では足りません。
では、どうやってその分析・可視化環境を作っていくのか、そのアイデアを説明します。
真に必要なのは「Form Submission ID(フォーム送信単位ID)」である
施策の精密な評価に必要なのは、フォーム送信1回ごとに一意なIDを発行することです。
私はこのIDのことをForm Submission IDと名付けています。
Form Submission ID がもたらす精密さ
- フォーム送信=1つのGAセッションへ100%結びつく
- そのセッションの参照元・LP・キャンペーンを確実に紐づけられる
- 施策単位(広告・SEO・メール)の寄与を正確に評価可能
- リード・商談化・成約へと綺麗にデータが流れる
MAやSFAツールではリードID・コンタクトIDなど、人に紐づいたIDが発番されます。しかし、このIDはあくまで人に対して紐づくIDです。デジタル集客の分析は、人単位ではなく、セッション(訪問)単位での評価が不可欠です。
具体例で考えてみましょう。
ある見込み客が以下のような行動を取ったとします
- 1回目:Google検索「BtoB マーケティング」→ 記事A閲覧 → 資料ダウンロード
- 2回目:Facebook広告クリック → LP閲覧 → ウェビナー申込
- 3回目:メルマガリンク → 事例ページ閲覧 → 商談申込
Client IDだけでは、この3回のコンバージョンそれぞれがどの施策から発生したかを正確に追跡できません。しかしForm Submission IDがあれば、各コンバージョンごとに流入経路や閲覧ページを正確に紐付けられます。
また、1回のセッションの中でも、複数のフォームに送信をする方もいます。
これらの方のデータを正確に分析しようと思うと、やはり、Form Submission IDが不可欠なのです。
なお、一部のMAツールではGoogle AnalyticsのClient ID(Cookie単位のユニークID)を取得しているから、うちのツールはGA連携もバッチリ!と謳っているものもあります。
しかしながらこれも十分とは言えません。なぜならば、Client IDは前述のリードID・コンタクトIDと同様、人(に近い)に対するIDのため、セッションごとの細かな追跡はできないのです。
やはり、データ精度の側面からみると、Form Submission IDに勝るものはありません。
連携の目的とゴール
この連携の目標は、次の問いに答えられるようにすることです
「どの施策が、どれだけ売上につながったのか?」
これを実現すると以下が可能になります
- アトリビューション分析(施策の貢献度)
- コンテンツROI分析(記事・LP別の成約寄与)
- パス分析(商談化までのWeb行動)
- リードタイム分析
特にSEOや広告の本質的な評価は、このレベルの統合なしには実現できません。
実際にどのように実装するのか
やり方は正直、大変です。生成AIがコードを書いてくれる時代とはいえ、マーケターで一人でやるのはなかなか大変です。できればエンジニアの手を借りた方がよいです。おおまかに以下のような設定を行います。
Step 1: Webフロントエンドでのデータ同期
- WebフォームでForm Submission IDを生成
- 弊社では、{ページパス}{タイムスタンプ}{乱数4桁}といったかたちでJavaScriptで生成することが多いです。
- 例:/contact_20251211182030_7a3f
- 弊社では、{ページパス}{タイムスタンプ}{乱数4桁}といったかたちでJavaScriptで生成することが多いです。
- Webフォームの非表示フィールドにForm Submission IDをセット
- ユーザーには見えない形で、生成したIDをフォームデータに含める
- GAのカスタムディメンションにもForm Submission IDをセット
- GA4側でもこのIDを記録し、セッション情報と紐付ける
- フォーム送信タイミングでデータが送られるようにする
(ここでは詳細な設定方法は省略します。)
Step 2:MA → SFA に Form Submission ID を同期
- MA・SFAのオブジェクトに項目追加し、ID取得できるようにする
- なお、主要MA・SFAでは以下のように設定していることが多いです。
- Salesforce:キャンペーンメンバーオブジェクトにカスタム項目を追加して同期
- HubSpot:フォーム送信をトリガーとしたワークフロー → Google SpreadsheetにID転記
- Marketo:プログラムメンバーカスタム項目に同期
Step 3:GAとMA/SFA双方で持っているForm Submission ID をデータ基盤上で統合
- GA4のBigQuery ExportデータあるいはGA4 Data APIでコンバージョン単位のForm Submission ID データを抽出
- この際、参照元 / メディアやランディングページなどのデータもForm Submission IDと一緒に抽出する
- MA/SFAツールからデータの抽出を行う
- データ基盤上(BigQuery、Snowflakeなど)やGoogle Spreadsheet上で統合
- Form Submission IDをキーとして、GA4側のセッション情報とMA/SFA側の顧客情報を結合
※ データ基盤(BigQuery、Snowflakeなど):大量のデータを一元管理し、高速に分析できるクラウド型のデータウェアハウス。複数のツールからデータを集約し、統合分析を行うために使用します。
- Form Submission IDをキーとして、GA4側のセッション情報とMA/SFA側の顧客情報を結合
Step 4:可視化
- Looker Studio などのBIツールで以下を可視化する
- 集客施策施策 → リード → 商談 → 成約 → 売上 の一気通貫可視化
- SEO記事別の売上貢献
- 広告の真のLTV
- LPごとの商談化率
- 優良リードの閲覧コンテンツ分析
「施策」と「人」をつなぐことの重要性
ここまで記載した通り、MA/SFAだけでは施策評価は不可能です。
一方で、GAだけで評価するのも、いわゆるWebCVだけでは、顧客になり得ない方のフォーム送信も多分に混在するため、正しく評価できるとは思えません。
また、SFAを見るマーケターや営業企画・経営企画の方と、集客を見るマーケターとでは使うツールも違うため、どこまでいっても共通言語・共通の指標で会話することは難しいです。
だからこそこの両者を統合して分析・可視化できる環境が必要になるのです。
この記事で紹介した内容は、導入には一定の技術的ハードルがあります。
しかしここまで実装すれば、組織全体が共通言語・共通指標で会話できるようになり、データドリブンなマーケティング戦略を推進できます。
最後にちょっぴり宣伝させてください。
私が代表をつとめる月曜日のトラでは、このForm Submission ID モデルを活用し、多くのBtoB企業のGA×MA/SFA×BigQueryのデータ統合を支援してきました。
もし同じ課題に直面しているなら、ぜひ一度ご相談ください。