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中小企業はTHE MODELをどう取り入れる?分業を急がず、売上から逆算する

岩永 梢絵 執筆/岩永 梢絵 執筆者の詳細はこちら →

「THE MODELは中小企業には合わない」とよく言われますが、正しいのは半分だけだと思っています。

「合わない」と感じるのは、人員や業務量に合わない分業の形を、そのまま持ち込むからです。マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスに人を分ける形だけを真似ても、前提が整っていなければ期待した効果は得られません。

一方、売上目標から必要な受注数、商談数、リード数を逆算する考え方は、規模に関係なく取り入れられます。人を分けることと、営業プロセスを分けて把握することは、別の話だからです。

この記事では、中小企業がTHE MODELの分業を取り入れる前に確かめたい条件と、売上目標から逆算する手順を説明します。そのうえで、リードから受注までを追うための記録の繋ぎ方と、私たちのツール運用例、導入を判断する目安を紹介します。

THE MODELの分業体制を形だけ真似るとうまくいかない理由

THE MODELの分業体制を形だけ真似るとうまくいかない理由リードは増えているのに、売上が動かない。セミナーの申込数もメールの開封率も改善しているのに、受注の数が去年と変わらない。中小企業のBtoBのマーケティングでは、この状態が起こります。

この状態に気づいた会社が手を伸ばすのが、THE MODELです。「THE MODELを参考に、段階ごとの指標を置けば、どこで詰まっているかが見えるはずだ」と。

この考え方自体はよいのです。しかし、段階を分けて把握することと、その段階ごとに専任者を置くことを、セットで取り入れる必要はありません。

リード数から積み上げて設計すると営業目標につながらない

マーケティング部門はリード数、営業は案件数。2つの数字が別々の場所で管理されていて、それを突き合わせる人はいない。THE MODELに手を伸ばす前の会社は、たいていこの状態です。

そして、マーケティング部門の多くが、リード数を目標に置いて走ります。

「月間リード30件、そのためにセミナーを月1本、ホワイトペーパーを四半期に2本」目標は明確で、達成したかどうかもすぐに分かります。

しかし、獲得したリードが商談になったか、受注に至ったかまでは、マーケティングの管轄外であることが多く、マーケティングの数字はよくても営業の数字はよくないという事態が生じます。

マーケティングは「リード30件を達成した」と報告し、営業は「今期は苦しい」と言うのです。どちらも嘘をついていないのに、話は繋がりません。

リード数から積み上げて設計すると、この形になりやすくなります。THE MODELが魅力的に見えるのは、この分断を「段階と指標」で埋めてくれそうに見えるからです。

専任者を置く前に確認すべきこと

THE MODELの著者である福田康隆氏は、ITmediaのインタビュー*で、分業のいいところは2つあると述べています。

  1. 各人が一番パフォーマンスを発揮できる仕事を任せられること
  2. 十分にスキルを蓄積していない人でも、特定の仕事を集中してやることで習熟度の向上が期待できること

私は、このメリットを自社で活かせるかを考えるなら、まずは「切り出す業務に人を充てられるか」「その人が集中して経験を積めるだけの業務量があるか」を確認すべきと考えています。

月に数件しか発生しない業務では、専任者を置いても習熟の機会は限られます。すべての役割に専任者を置く必要もありません。業務量に応じて、一部の仕事だけを切り出す選択もあり得ます。

また、段階ごとの商談化率や受注率を使って改善を判断するなら、判断に足りる件数があるかも確認しておきたいところです。これは人を分けるための必須条件ではなく、率をどう評価するかの条件になります。

ターゲットの数とリードの発生量で分業体制を決める

マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割を1〜2人が兼務している状態では、役割別のKPIを立てても、管理する主体が同じ人になります。専任者を置くほどの業務量がなければ、担当を分ける効果は限られるのです。

福田氏も、条件によっては分業しない選択があると述べています。

「営業5人体制の会社でエンタープライズ向け、業種特化型などでターゲット企業が300社程度であれば、インサイドセールスを採用せずに、営業に60社ずつテリトリーを割り振って集中的に活動させる方が良いかもしれません」。

一方、幅広い業種の中小企業までを対象とし、毎月一定のリードを獲得できる場合は、5人のうち1人をインサイドセールスに回す選択も示しています。

つまり判断を決めているのは、人数そのものではなく、ターゲットの数やリードの発生量、商材の特性などです。

福田氏自身も「著書にも書きましたが、どの会社にもそのまま適用できるモデルなど存在しません」と述べています。

中小企業が確かめるべきなのは「THE MODELは正しいか」ではなく、「自社は分業の前提を満たしているか」です。

THE MODELから取り入れるべきは「売上目標から逆算する」考え方

売上目標から逆算する3つの基本式兼務の場合でも、リード・商談・受注の各段階の件数と進捗は分けて把握しておくことが大切です。人を分けなくても、売上目標から必要な受注数、商談数、リード数を割り出すことは可能だからです。

具体的な数字で見ていく前に、ここで使用する用語を定義しておきましょう。

  • 実績率:商談化率と受注率をまとめた呼び方です。過去1年に実際に起きた結果から出します。
  • 商談化率:ある期間に獲得したリードのうち、一定の追跡期間内に商談化した割合です。
  • 受注率:対象の商談のうち、受注に至った割合です。

必要受注数から必要商談数、必要リード数と逆算する

逆算の設計は、売上目標から始めます。
必要受注数→必要商談数→必要リード数の順です。

6,000万円の売上に必要なリード数の逆算例

新規で獲得する必要のある売上を、平均受注単価で割ると、必要な受注数が出ます。たとえば、新規で必要な売上が6,000万円、平均受注単価が100万円なら、60件です。全社の売上目標には既存契約の継続も含まれるので、そこから既存の見込みを引いた数字を使います。受注から売上計上まで時間がかかる商材なら、そのずれも見ておきましょう。

この年間受注60件を起点にします。次に、過去1年の実績から、商談がどれくらいの割合で受注に至ったかを出します。
ここでは仮に受注率25%とします。すると必要な商談数は、60÷0.25で240件です。

同じように、リードがどれくらいの割合で商談になったかを出します。リードは、重複を除いた見込み客の数で数えます。
商談化率30%なら、必要なリード数は240÷0.3で800件。月あたり約67件です。

年間800件を月67件に割るのも、季節性や受注までの期間を省いた概算です。設計の入口では、この概算で足ります。

必要受注数から逆算すると「改善すべき箇所」の仮説が立つ

必要受注数から必要リード数を出すやり方を取ると、どこを改善すべきかの仮説が立つようになります。

先の例で、現在の商談化率30%・受注率25%を前提にすると、必要なリードは月約67件です。

月約67件を獲得できているのに目標に届かないなら、まず商談化率・受注率が想定を下回っていないかを確認します。あわせて、受注単価や受注までの期間が想定から変わっていないかも見ます。

いま獲得できているリードが月30件なら、必要な月約67件には足りていません。リード獲得の拡大と、商談化率・受注率の改善を組み合わせることになるので、それぞれの実現可能性と費用を比べます。

この切り分けができると、打つ施策が絞られます。

リード量が足りないなら集客の話、商談化率が低いならリードの質か初回接触の話、受注率が低いなら提案かターゲット選定の話です。

積み上げで設計していると、この3つが全部「マーケティングを頑張る」に丸められてしまいます。

リード・商談・受注の数え方を、マーケティングと営業で揃える

逆算に使う実績率を出すには、リード・商談・受注の定義、対象期間、重複の扱いをマーケティングと営業で揃えていることが前提条件になります。別々の基準で集計した数字を割っても、必要数を見積もる根拠にはならないからです。

基準が揃った記録があれば、流入元の施策まで分からなくても、全体の実績率を使った概算はできます。逆算の目的は、目標達成に必要な件数を出し、現状との差を把握することです。

この2つの率は、たいてい営業側の記録から出せます。商談と受注の件数は営業が持つ案件の一覧、リードの件数はフォームの送信記録や問い合わせの管理表です。商談化率を出すときは、重複を除いたリードのうち、どれが商談になったかを確認します。

手元にないときは、営業担当者に「過去1年に生まれた商談の件数と、そのうち受注に至った件数」を、期間を区切って出してもらうところから始めましょう。平均受注単価も同じ一覧から出ます。

一方、どの施策を増やすか、見直すかを判断するには、施策から商談・受注までの紐付けが必要になります。記録の繋ぎ方は、これから説明します。

目標の逆算と月次の改善では、率の見方を変える

目標の逆算と月次の改善では、率の見方を変える目標設計のために率を使うことと、月次の率の変化から施策の効果を判断することは、分けて考えます。

逆算に入れるのは、過去1年の結果から出した実績率です。

求めているのは必要リード数の桁感です。年間800件なのか400件なのかが分かれば設計はできます。1年分をまとめればばらつきは抑えられますが、年間でも商談が数件なら率は大きく動きますし、商品や価格、顧客層が変われば過去の率はそのまま使えません。

件数が少ないときは、低め・標準・高めの3ケースで必要数を試算しておきます。3つの率は、商品や顧客層が近い過去の実績を基準に、前提を書き添えて幅を持たせます。

一方、商談化率と受注率を月ごとに追い、下がった段階に手を打つ運用もあります。

これは月単位の変化を判断材料にするので、要求される精度が違います。月20件の母数では、1件の増減で率が5ポイント動きます。それが施策の効果なのか揺らぎなのかを、月次の率だけでは判別できません。

年単位の目標設計と、月単位の改善判断。母数が少ないうちは、月次の率だけで施策の良し悪しを決めず、個々の案件の経緯も合わせて確認します。

施策を評価するために、起点から受注までの記録を繋ぐ

施策から受注まで記録をつなぐデータフロー必要な商談数が分かっても、どの施策から商談が生まれているかが分からなければ、施策ごとの貢献は評価できません。

ここからは、逆算した必要数を施策の判断に繋げるためのお話をします。

段階別KPIを細かくする前に受注案件を1件、確認する

段階別KPIを細かくする前に受注案件を1件確認しましょう。

それがどの商談から、どのリードから、どの施策から来たかを、システムの記録だけでたどれるか見てください。たどれなければ、どこで切れているかが、そのまま記録や連携を整える課題になります。

自分でシステムを開けない場合は、営業担当者に受注案件を1件選んでもらい、その画面を一緒に見せてもらいます。見るのは3点です。案件に紐付いた顧客企業とその企業の担当者が最初に問い合わせたときの記録、そしてその記録に流入元が残っているかどうかです。

営業側では「資料請求から生まれた商談」まで分かっていても、マーケティング側が知りたい「どの広告や記事を経由した資料請求か」が残っていないことがあります。フォーム送信ごとの記録と商談を紐付けることで、双方が同じ商談を施策側・営業側から確認できます。

リードのスコアリングや部門別の転換率を細かくする前に、まずはこの繋がりを確かめましょう。

記録を繋ぐための確認ポイント

リードから売上まで通しで見るために、確認したいポイントは3つです。

  1. リード・商談・受注の件数を、1か所で見られる
  2. 段階間の受け渡しで、記録が欠けない
  3. 転記の負担や抜け漏れを抑える

大切なのは、リード・商談・受注の記録を後から辿れることです。1と2はそのための条件で、3は手間と抜け漏れを減らすための条件です。転記をAIやツールの連携で自動化できれば、3は満たしやすくなります。

運用中のツールが1つでも、関連付けや入力が欠ければ追えません。逆に別々のツールでも、同じ会社や案件に共通の番号(識別子)を持たせて自動でやり取りできていれば繋がります。

記録を繋ぐ仕組みづくりを誰に頼むかは会社によります。多くの場合は、フォームや計測タグはサイトを作った会社か自社のWeb担当、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)の設定はそのツールの管理者かベンダー、リードと商談の定義は営業の責任者です。

ちなみに、GA4・MA・SFAを繋ぐ方法は、別記事「この広告からどれだけ商談化したのかを知りたい!GA4とMAとSFAの繋げ方」で書いております。ご興味があればご覧ください。

HubSpot運用例と、ツール導入・見直しの目安

記録を繋ぐ方法は、既存の営業基盤や案件数、運用できる人数によって変わります。

ここでは製品同士の比較ではなく、私たちの運用例と、導入・見直しを判断する目安を紹介します。

1〜2人が最後まで見る、私たちのHubSpot運用

私たちは、「分業せず、1〜2人が最後まで見る組織」です。ツールは、HubSpotを使っています。

HubSpotでは、コンタクト(人)、企業、取引(商談)といった単位が同じ土台の上で繋がっていて、関連付けてそのままレポートにできます。公式のナレッジベースが「同じデータプラットフォーム」と呼んでいる構造です。

私たちの場合は、商談の進み方を管理する一覧(パイプライン)を1本にしています。ヒアリング前から受注・失注まで、営業プロセスをそのまま段階にし、案件がいまどこにいるかを全員が同じ画面で見られるようにしています。

  • コンタクトが追加されたら、関係する範囲の人に通知が飛ぶ
  • マーケティングと営業にまたがる動きは、HubSpotのプロジェクト機能で1か所に置く
  • HubSpotの数字は、AIとしくみで集計用のシートに自動で書き出す。人が見に行って転記する工程はない
  • 週に1回のミーティングで、各人が自分の数字を確認する

また、受注に至らなかった案件は「失注」とは別に、「中止」「提案せず」を記録しています。この分け方なら、受注に至らなかった案件の中に、中止や提案しなかったものがどれだけ含まれているかを確認できます。

経緯をたどることで、提案内容を見直すべきなのか、提案前の見極めや案件の進め方を確認すべきなのかを検討する手がかりになります。

既存の営業基盤があるなら、まず連携を確認する

Salesforceなどが営業の基盤として定着しているなら、すぐに乗り換えを考えるのではなく、いまの基盤にマーケティング側の記録を繋げられるかを確認します。受注まで追えない原因が、ツールそのものではなく、関連付けや入力の不足にある可能性もあるからです。

ここでの判断軸は、営業の運用を保ちながら、必要な記録を無理なく繋げられるかどうかです。製品ごとの機能や運用コストの比較は、私たちが自分の組織で実装して確かめた範囲を超えるため、この記事では扱いません。

リードが月数件なら、スプレッドシートで足りるかを見る

リードが月に数件で、案件の数も人の記憶に収まる規模なら、スプレッドシートで足りるケースが多いです。CRM(顧客関係管理)ツールがあれば楽ですが、この規模では必須ではありません。転記の手間より、ツールを設定して覚える手間のほうが大きいからです。

判断の目安は、流入元、対応履歴、次の行動、受注か失注かを無理なく記録できていて、担当者以外の人もそれを追えるかどうかです。記録が担当者の記憶にしかない状態は、この規模でも避けます。転記漏れや二重入力、更新の遅れが出始めたときが、ツールを変える合図です。

よくある質問

こういった場合によくある質問を2つご紹介します。

リードが月10件以下でも逆算設計は意味があるか

あります。いまのリード数で売上目標に届く見込みがあるか、どれくらい不足するかを考えるために使えます。

ただし、件数が少ないほど実績率はぶれます。1つの率で必要数を断定せず、低め・標準・高めの3ケースで試算し、必要な件数の幅を見ておきます。

また、月次の転換率だけでは、施策が効いたのか偶然なのかを判断しにくくなります。施策の見直しでは、個々のリードがどこから来て、どこまで進んだかも合わせて確認します。逆算で必要数を見積もることと、案件の経緯から改善の手がかりを探すことを、使い分けましょう。

すでにMAやSFAを導入済みの場合はどうすべきか

本文で紹介した「受注案件を1件たどる」確認から始めてください。たどれるなら、他の主要なチャネルの案件でも確認し、集計や運用に無理がないかを見ます。

たどれない場合も、まずは途切れている箇所の関連付けや連携を直せるかを確認します。その改善で足りるなら、乗り換える必要はありません。

中小企業は、分業の型の前に逆算と記録の繋がりを取り入れる

中小企業はTHE MODELをどう取り入れる?分業を急がず、売上から逆算するまずは売上目標から必要な受注数、商談数、リード数を逆算し、現状との差を把握する。そのうえで、どの施策が商談や受注に繋がったかを追える記録を整える。この2つは、担当者を分けなくても始められます。

ツールを選ぶのは、必要な記録と運用が決まってからです。分業の形を先に借りるのではなく、自社の人数と業務量で回せる形を作っていきましょう。

HubSpotの導入・運用ご支援のご紹介

月曜日のトラでは、売上目標からの逆算と、リードから受注までを繋ぐ記録の設計から承っています。逆算に入れる率が手元にない、リードは増えているのに受注の数が変わらない、HubSpotを入れたが商談まで追えていない。どんな状態からでもご相談いただけます。

HubSpotの導入と活用の支援については、HubSpot導入・活用支援のページにまとめています。

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